「儲けたいってどれくらいですか?」
この言葉は、中西教授が投資をしたい生徒に必ず始めに聞くようにしている質問である。頭の中で具体的な数字が出てこなかった人は、金融脳が鍛えられていないかもしれない。
中西教授は「お金について教えている私が、生徒に銭なくても幸せやで!と伝えることもしています(笑)」と、インタビュー中におっしゃっていたことが印象的。
今回は、金融論・証券市場論を研究している阪南大学経済学部の中西 正行(なかにし まさゆき)教授に、若者が金融教育を学ぶメリットや金融教育で大切にしていること、若い頃のお金の使い道について話を伺いました。
一辺倒ではない金融教育の話を、ぜひ最後までお読みください。
話を聞いた中西教授はこの方!
1万円引き出すのに100円払っていたらどれくらい金利がかかっているか?
ーー中西教授は何を大切にしながら生徒に金融教育を教えていますか?
金融教育で大切にしているのは、一般的なことではなく個人に目を向けたリアリティーのある金融の話を伝えることをモットーにしています。もちろん、「長期・積立・分散」のような教科書通りの金融教育も大切ですよ!
私の生徒にも「本気で投資をしたいと考えている人は来てください」と伝え、実際にお金を用意してもらって口座を作る。なんか宗教みたいでちょっと怪しいですけど(笑)。
その過程の中で生徒から、以下のような質問を浴びせられます。
- どこで口座作ればいいんですか!
- 何円くらい必要ですか!
- これでどれくらい儲かりますか!
金融リテラシーを高めることにつながるのは、こういった会話です。
自分の資産や目標と”にらめっこ”しながら、自分の頭で考えるのが本当の意味でリアルな金融教育ではないでしょうか。
ーー生徒に教えている具体的なことを詳しくお聞かせください。
「儲けたいってどれくらいやねん!」という質問を必ず生徒にします(笑)。というのも金融リテラシーのない生徒は、投資がとんでもなく儲かるものと勘違いしている場合が多い印象です。金融リテラシーにおける基本のきが理解できていないんですね。
私が生徒に「銀行でお金を引き出すとき手数料を払っていますか?」と聞くと、大抵「払っています」と答えます。
「1万円引き出すのに100円払っていたらどれくらい金利がかかっているか分かりますか?」という質問に対して「1%ですかね」と生徒が答えるわけです。
これは間違っていて、1日で100円かかっているわけなので年率で考えると相当な額支払っていることになります。
このように身近なお金の話を使いながら、金利は年単位で考えなければならないことやパーセントで考える必要があることなど、金融の感覚を分かりやすく身に付けてもらうことから教えています。
【教えて中西教授】若い頃は何にお金を使っていましたか?
生徒にも「先生は学生時代や20代の頃、資産運用にお金使っていましたか?」とよく聞かれます。つまり、20代の人は若い頃からお金を投資に回した方がいいのか、経験に使った方がいいのかが気になっているということですね。
その質問に私は、もちろん投資に回すお金があるに越したことはないが、それよりも経験にお金を使いなさいと答えました。
理由は、若い頃に遊びや学びにお金を使わないと、「経験格差」が生まれるためです。若い頃の経験がないと、社会人になっても発想が乏しかったり、面白く仕事ができなかったりします。
なので若い頃は、経験や自己投資に優先的にお金を使うことがおすすめです。
その中で、少しでも資産運用について勉強し、500円でも稼ぐ力を身に付けておきましょう。
そうすれば、30代になってある程度お金に余裕が出てきた段階で、資産運用に回すお金を増やせば、自ずと稼げる金額も大きくなっていきますので。
中西教授が考える理想の金融教育
ーー中西教授は理想の金融教育をどのようなものとお考えですか?
高校生が授業で受けるような教科書的な金融リテラシーと、私が生徒に教えている市場をテーマにした尖った金融教育、どちらもきちんと学ぶことが理想だと考えています。
なので、私は教科書的な金融リテラシーは面白くないと感じながらも、外部講師を招いて生徒に学ぶ場を提供しています。
理想として、何も知らない人に教科書的な金融教育の話だけしていると、すごく退屈に感じられてしまうものです。なので、少し尖った面白い話も入れこむべきなのかなと。
若い人が金融教育を学ぶべき理由は老後への備え
ーー20〜30代の人が金融教育を学ぶ最大のメリットは何ですか?
やはり、老後の資金を早期に少しでも貯められるようになることですかね。老後2,000万円問題があったように、ある程度は老後に向けて資産を残さなければなりません。
- 一軒家を購入するのか
- 車を買うのか
これらの要素でも、お金の流れは大きく変化するのでどれくらいの資金を貯めとくべきなのか、一度調べてみてもいいでしょう。
あと、私はどうにもならなくなったときの生活保護や自己破産についても、きちんと教えています。
【教えて中西教授】金融リテラシーがある人とない人の違いは何?
NISAとiDeCoどちらを使うのか。これが、金融リテラシーがある人とない人を見分ける明確な質問だと思っています。もちろん、ご自身の環境や目標によってNISAが適切な場合もありますが、正解はiDeCOです。
iDeCOの節税効果を理解するには、金融リテラシーがある程度高くなければ難しいと感じています。いわゆる、目に見えないお金の動きですね。
「政府がNISAを進めているからNISAを始める!」と盲目的になるのではなく、自分の頭できちんと考えてから結論を出せるようになるのが、金融リテラシーが高い人になる第一歩です。
投資はサイエンスなのかアートなのか
ーー最後に、この記事を読む読者に向けてメッセージをお聞かせください。
よく生徒に「投資はサイエンスだと思う?アートだと思う?」と質問します。私は、投資をアートだと感じています。もちろん、サイエンスの部分も強いんですが(笑)。
アートである理由は、投資が自己実現になるためです。
- どういう想いで投資したのか
- どこに投資するのか
- 世の中をどう変えていきたいから投資するのか
単に儲ける額だけでなく、応援したい企業の軸で考えるのはいかがでしょうか?
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